「敷金を預かっているから、退去費用はそこから引けばいい」は要注意
共有名義の物件を貸し出す際の注意点!管理行為・変更行為の違いと「年数制限」

兄弟で実家や土地を相続したなど、不動産を複数人で共有(共有名義)しているケースは珍しくありません。「空き家・空き店舗・空き地がもったいないから賃貸に出そう」と考えたとき、単独名義の物件と同じ感覚で進めると、思わぬ法律トラブルに発展する可能性があります。
今回は、複数人で所有する物件の賃貸借契約で知っておくべき「法律(民法)の基本ルール」と、見落としがちな「年数制限とその対策」について分かりやすく解説します!
共有物件のルールを決める「2つの行為」
民法では、共有物件の取り扱いをその影響度合いに応じて分類しています。賃貸に出す際、特に重要になるのが「管理行為」「変更行為」の違いです。
1. 管理行為とは?(持分割合の過半数で決定)
物件の性質を大きく変えずに利用・改良する行為です。 一定の条件を満たす短期の賃貸借契約の締結や、賃借人の退去(契約解除)は、原則としてこの「管理行為」に該当します。
必要な要件: 共有者の「持分割合の過半数」の同意
ポイント: 「人数の過半数」ではありません。例えば3人で共有していても、Aさんが6割の持分を持っていれば、Aさん単独の意思で短期間の貸し出しは法律上可能です。
2. 変更行為とは?(全員の同意が必要)
物件の形状を物理的に変える大がかりなリノベーションや、長期間の賃貸、物件そのものの売却などが該当します。
必要な要件: 共有者全員の同意
ポイント: 持分に関わらず、1人でも反対する人がいれば実行できません。
【重要】賃貸借契約における「年数制限」の壁
ここで最も注意すべきなのが、「すべての賃貸借契約が持分の過半数(管理行為)でできるわけではない」ということです。民法(第252条第4項)により、一定期間を超える長期の賃貸借契約は物件への影響が大きいため、「変更行為」として扱われ、共有者全員の同意が必要になります。これが一番重要なポイントです。
【持分の過半数(管理行為)だけで貸し出せる期間の上限】
建物の賃貸借: 3年以内(普通賃貸借は変更行為にあたる可能性が高く不可)
土地の賃貸借: 5年以内 (※植林目的の山林等は10年以内)
つまり、マンションや戸建てを普通賃貸借で「2年契約」更新可で貸したり、駐車場として土地を「10年定借」で貸したりする場合は、持分の過半数では足りず、全員の同意が必須となるのです。
<対策> 全員の同意が得られない場合はどうする?
もし一部の共有者と連絡が取れない、あるいは反対されていて全員の同意は得られないけれど「持分の過半数」は確保している場合、どうすれば合法的に貸し出せるのでしょうか?
有効な対策:期間内の「定期借家契約」「定期借地契約」を結ぶ 更新を前提とする通常の「普通借家契約」の場合、期間を「2年」と定めても、借地借家法によって借主が強く保護され、法定更新によって実質的に3年(土地は5年)を超えて貸し続ける状態になるリスクがあります。
そこで、契約の更新が一切ない「定期借家契約(建物なら3年以内)」や「定期借地契約(土地なら5年以内など)」を活用します。これにより、確実に上限年数内で契約が終了することが担保されるため、変更行為にはならず、持分の過半数(管理行為)だけで安全に契約を締結することが可能になります。
実務を進める上での3つの注意点
�� トラブル防止のため基本は「全員の同意」を目指す
法律上は持分の過半数+定期契約で貸し出せますが、事後報告は親族間の感情的なしこりを生みます。実務上のベストプラクティスは、やはり事前に全員で話し合うことです。
�� 代表者が契約する場合の「証拠」残し
代表者が契約書にサインする場合、後々の「言った・言わない」を防ぐため、必ず他の同意した共有者から同意書や委任状をもらい、書面で証拠を残しておきましょう。
�� 家賃収入の分配と確定申告を忘れない
家賃は代表者の口座に振り込まれても「持分割合に応じて」各共有者に分配する義務があります。また、家賃収入を得た各共有者は、ご自身の持分に応じた不動産所得としてそれぞれ確定申告が必要です。
まとめ
共有物件の賃貸は、「管理行為(過半数)」と「変更行為(全員)」の違い、そして「建物3年・土地5年」という年数制限を正しく理解することが重要です。 不動産に関する法律は複雑で、法改正も絡むため自己判断は禁物です。具体的な契約を進める際は、不動産会社や弁護士などの専門家に相談しながら慎重に進めましょう!



