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水害・台風対策ガイド|オーナーが今すぐ確認すべきハザードマップ・保険・事前準備

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賃貸管理のお役立ち情報『水害・台風対策ガイド|オーナーが今すぐ確認すべきハザードマップ・保険・事前準備』

「うちのアパートは河川から離れているから水害は関係ない」——そう考えているオーナーほど、近年の豪雨被害で痛い思いをしています。気候変動の影響で、線状降水帯やゲリラ豪雨は河川から遠く離れた都市部でも頻発し、いまや「水害は誰にでも起こりうる災害」となりました。にもかかわらず、火災保険に水災補償をつけている世帯は3割程度にとどまるという内閣府の調査結果もあります。

本記事では、賃貸オーナー・大家さんに向けて、自物件の水害リスクを正しく把握する方法、火災保険の水災補償の見直し方、台風シーズン前にやるべき事前対策、浸水被害が出たときの初動対応までを、行政の一次情報をもとに体系的に解説します。「気候変動の時代に賃貸経営を守る」という観点で、ぜひ最後までご覧ください。

1. なぜ今、賃貸オーナーは「水害」への備えが急務なのか

近年、日本では台風の大型化に加え、線状降水帯による集中豪雨やゲリラ豪雨が各地で頻発しています。河川の氾濫だけでなく、都市部の排水能力を超える雨で道路や建物が浸水する「都市型水害(内水氾濫)」も増加しており、これまで「水害とは無縁」と思われていた地域でも被害が報告されるようになりました。

河川から離れていても安心できない時代

都市型水害は、河川や沿岸部から離れた地域でも発生します。下水道などの排水能力が短時間の豪雨に追いつかず、マンホールから水があふれて道路や低層階の住戸に流れ込むケースです。「うちは高台だから」「川がないから」という地理的な安心材料は、もはや絶対ではありません。

水害補償の付帯率は3割程度という現実

内閣府の世論調査によれば、今後10年の間に台風や集中豪雨で自宅が被害を受ける可能性があると考えている人は44.5%に上る一方で、火災保険・共済に「水災補償」をつけている世帯はわずか31.1%にとどまります。リスク認識と備えの間には、大きなギャップが存在しているのです。

オーナーには「修繕する義務」が法律で定められている

賃貸経営の観点で見逃せないのが、民法606条が「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めている点です。水害で建物や設備が損傷すれば、その修繕は原則オーナーの責任で行う必要があり、補償がなければ自己負担額は数百万円規模になることもあります。「備えがあるかどうか」が、賃貸経営の継続を左右する時代になっています。

2. 自物件の水害リスクを5分で把握する——ハザードマップ活用術

備えの第一歩は、自物件の水害リスクを正確に知ることです。国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」を使えば、誰でも無料で、わずか数分で確認できます。

「重ねるハザードマップ」で全国のリスクを一覧確認

ハザードマップポータルサイトには、「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2種類があります。前者は、洪水・内水氾濫・高潮・津波・土砂災害といったさまざまな災害リスクを、全国の地図上で一つの画面に重ねて確認できる仕組みです。住所を入力するだけで、その地点の浸水想定の深さや、過去の自然災害伝承碑、指定緊急避難場所などをまとめて把握できます。

「わがまちハザードマップ」で自治体独自の情報を確認

一方の「わがまちハザードマップ」は、各市区町村が作成したハザードマップへのリンク集です。地域の実情を反映した詳しい情報や避難計画が掲載されているため、重ねるハザードマップと併用することで、リスクの理解が一段と深まります。

オーナーが特に確認しておきたい4つの項目

確認すべきポイントは次の4つです。1つ目は、洪水浸水想定区域に該当するか、該当する場合の想定浸水深はどの程度か。2つ目は、内水氾濫のリスクがあるか。3つ目は、高潮や津波の浸水想定範囲に入っていないか。4つ目は、土砂災害警戒区域・特別警戒区域に該当しないかです。物件購入時に確認していても、近年は想定が更新されているケースも多いため、最新版で再チェックすることをおすすめします。

過去の被害履歴も合わせて調べる

ハザードマップに表示される「自然災害伝承碑」は、過去にその地域で起きた自然災害の規模や被害状況が記された石碑などの情報です。地域の災害史を知ることで、ハザードマップが示すリスクのリアリティが増します。「過去の災害は未来の指針」という視点も、ぜひ取り入れたいところです。

3. 火災保険の「水災補償」を正しく理解する

リスクを把握したら、次は補償の見直しです。火災保険の水災補償は、すべてのプランに自動でセットされているわけではないため、自分のプランに含まれているかどうかを必ず確認してください。

水災補償の対象になるのは「自然災害による浸水」

水災補償の対象は、台風・暴風雨・豪雨を原因とする洪水、高潮、土砂崩れなどによる損害です。一方で、地震に起因する津波による損害は地震保険の領域、マンション上階からの水漏れは「水濡れ事故」として別の補償区分となり、いずれも水災補償の対象外となります。「水に関する被害」がすべて補償されるわけではない点に注意が必要です。

支払い条件には「浸水の深さ」「損害割合」などの基準がある

水災補償が支払われるかどうかは、保険会社のプランによって基準が異なります。一般的には、「床上浸水」「地盤面から45cmを超える浸水」「建物または家財の損害が再調達価額の30%以上」といった条件のいずれかを満たすことが要件となるケースが多いです。「水につかれば必ず補償される」わけではないため、契約時にどの条件で支払われるかを必ず確認しておきましょう。

2024年10月の保険料改定で「地域別の細分化」が進んだ

賃貸オーナーにとって近年大きな変化となったのが、2024年10月の火災保険料改定です。損害保険料率算出機構は、参考純率を全国平均で13.0%引き上げると同時に、水災リスクを地域ごとに細かく分類する改定を行いました。これにより、水害リスクの高い地域では保険料が上がる一方、リスクの低い地域では相対的に抑えられる構造になっています。改定後の保険料を踏まえ、補償内容と保険料のバランスを定期的に見直すことが重要です。

オーナー向け保険と入居者向け保険を切り分けて考える

賃貸物件では、建物本体はオーナーが加入する火災保険で、入居者の家財は入居者自身が加入する家財保険で補償するのが基本構造です。借家人賠償責任保険は入居者の過失による損害をカバーするものなので、自然災害による建物被害の修繕は、オーナー側の保険でしっかり備える必要があります。施設賠償責任保険を併用しておくと、建物の不備に起因する第三者への賠償リスクにも対応できます。

4. 台風シーズン到来前にオーナーがやるべき事前対策

台風シーズン(一般的に7月〜10月)の本格化を前に、平常時に済ませておきたい点検・対策があります。事前準備があるかどうかで、被害の大きさは確実に変わります。

共用部の排水設備を点検・清掃する

もっとも見落とされがちなのが、共用部の排水設備です。屋上やベランダの排水溝、雨樋、敷地内の側溝などに落ち葉やゴミが詰まっていると、大雨時にあふれて室内への浸水を招きます。台風シーズン前には必ず清掃し、排水機能を確保しておきましょう。

外壁・屋根・建具の劣化箇所を補修する

瓦のずれ、外壁のひび割れ、雨戸やシャッターの不具合、サッシのコーキングの劣化など、強風や豪雨で被害が拡大しやすい箇所を事前に補修しておきます。アンテナや看板、外付け給湯器の固定状態も要チェックです。これらは「老朽化を放置していた」とみなされると、後の賠償判断にも影響しかねないポイントです。

共用部に「飛散物の元」がないか確認する

強風で飛ばされる可能性のあるもの——掲示板の剥がれかけたポスター、自転車置き場のカバー、植木鉢、ゴミ集積所のフタなど——は、撤去または固定しておきましょう。隣家や通行人にぶつかれば、賠償問題に発展するおそれもあります。

入居者へ事前のお知らせを配布する

台風シーズン入り前に、入居者向けの注意喚起文を配布または掲示しておくと効果的です。「ベランダの物の片付け」「窓の施錠」「停電・断水時の対応」「緊急連絡先」をまとめた1枚があるだけで、被害は大きく軽減できます。

緊急時の連絡先・業者リストを最新化する

管理会社、修繕業者、清掃業者、保険会社の連絡先を一覧にまとめ、すぐに参照できる状態にしておきます。特に被災地全域で業者の取り合いになるため、複数の業者と関係を作っておくことが復旧スピードを左右します。

5. 台風接近時に入居者へ伝えるべき注意喚起のポイント

台風が接近してきたタイミングで、入居者へ周知しておくと安心な項目があります。これらは入居者の安全を守るだけでなく、建物への被害や賠償リスクの軽減にもつながります。

ベランダ・バルコニーの物を必ず室内に取り込む

マンションやアパートの台風被害でもっとも多いのが、ベランダから飛ばされた物による窓ガラス破損や他世帯への被害です。物干し竿、植木鉢、サンダル、子どもの遊具、洗濯バサミなど、軽量なものでも強風で凶器に変わります。台風接近の前日までに、ベランダのものをすべて室内に取り込むよう周知しましょう。

窓の施錠と飛散防止対策

窓は確実に施錠し、カーテンを閉めておきます。万が一の窓ガラス破損に備え、内側から養生テープを「米」字に貼ったり、市販の飛散防止フィルムを貼ることも有効です。ただし、フィルムは種類によっては窓ガラスの熱割れの原因になることがあるため、長期使用する場合は管理会社や大家さんへの相談が必要です。

ベランダの排水口は塞がないように注意

意外と見落とされがちなのが、ベランダ排水口の管理です。落ち葉や砂で塞がっていると、降った雨が排水しきれず、室内まで浸水する原因になります。台風前に入居者にもベランダ排水口の清掃を呼びかけておきましょう。

停電・断水への備えを案内する

強風による停電や、断水のリスクに備え、飲料水・モバイルバッテリー・懐中電灯の準備、浴槽への水張りなどを案内しておきます。エレベーターが停止する可能性もあるため、高層階の入居者には特に丁寧な周知が望まれます。

6. 浸水被害が発生したときの初動と復旧手順

備えていても被害が発生してしまうことはあります。重要なのは、初動を間違えないことです。被害の証明、保険申請、復旧作業を正しい順序で進めましょう。

STEP1:安全を確保し、被害状況を写真・動画で記録する

水が引いていない段階での無理な作業は厳禁です。安全が確保できる範囲で、建物の外観・室内・床下・共用部を、複数の角度からできるだけ多く撮影します。これらの記録は、罹災証明書の申請と保険金請求の根拠資料になります。「片付けてから撮影」では遅いので、まず記録、それから片付けの順番を徹底してください。

STEP2:自治体へ罹災証明書を申請する

罹災証明書は、被害の程度を公的に証明する書類で、災害対策基本法により「遅延なく発行しなければならない」と定められています。申請先は物件所在地の自治体(市区町村)です。床下浸水も住宅の一部損壊と認められるため、罹災証明書の発行対象となります。申請書、本人確認書類、被害状況の写真・動画などを準備し、早めに手続きを進めましょう。

STEP3:保険会社へ連絡し、保険金請求の手続きを行う

記録した写真・動画とともに、加入している火災保険会社へ連絡します。水災補償の支払い要件(床上浸水・地盤面から45cm超など)を満たしているかを保険会社が判断し、被害確認のうえ保険金が支払われます。被害から時間が経ちすぎると認定が難しくなるため、早めの連絡が重要です。

STEP4:床下の汚泥除去・乾燥・消毒を行う

水害で流れ込んだ水には汚泥や雑菌が含まれており、放置すると悪臭・カビ・健康被害の原因となります。水が引いた後は、床下の水・汚泥を除去し、十分に乾燥させ、消毒を行う必要があります。フローリングで点検口がない物件では、専門業者の対応が必要になるケースも多いため、無理に自力で進めず専門家に相談しましょう。

STEP5:入居者対応と修繕計画

修繕中に入居者がそのまま住み続けられるのか、一時的な転居が必要なのかを、被害の程度に応じて判断します。住み続けられない場合は賃貸借契約の取扱いについて、住み続けられる場合は工事スケジュールと賃料の調整について、入居者と早期に協議しましょう。被害状況によっては、自治体に被災者向けの公的支援制度(被災者生活再建支援制度など)があることも入居者に案内できると親切です。

7. 中長期で取り組む「水に強い物件」へのアップグレード

応急対応だけでなく、中長期で物件そのものの水害耐性を高めていくことが、資産価値の維持につながります。

止水板・土嚢ステーションの導入

1階の玄関や駐車場、地下への入り口など浸水の可能性がある開口部には、止水板の設置が有効です。常設タイプのほか、台風接近時に取り付ける簡易タイプもあり、物件規模や立地に応じて選べます。土嚢を備蓄しておく、地域の土嚢ステーションの場所を把握しておくことも実用的です。

電気設備・給湯器の設置場所を見直す

分電盤・給湯器・室外機などが地面近くに設置されていると、浸水で一気に故障し、復旧に時間とコストがかかります。設備の更新タイミングに合わせて、可能な範囲で高所への移設を検討しましょう。これは2024年以降の水災料率細分化を踏まえても、長期的なコスト削減につながる投資です。

大規模修繕に合わせた防水・耐風強化

屋上防水、外壁シーリング、サッシの更新といった大規模修繕は、台風・豪雨への耐性を一気に底上げできるタイミングです。修繕計画を立てる際は、「美観の回復」だけでなく「水害・台風への耐性向上」も優先項目として組み込みましょう。

共用部の地形リスクを物理的に低減する

敷地内に水が溜まりやすい場所がある場合は、排水経路の追加、勾配の調整、雨水桝の増設などで物理的にリスクを下げることも検討できます。専門業者に現地診断を依頼すれば、その物件特有の弱点が見えてきます。

8. まとめ:水害対策は「やるか・やらないか」で資産価値が変わる

気候変動の進行は、もはや一時的なトレンドではなく、賃貸経営における恒常的なリスク要因です。水害は地震と違って「ある程度予測できる」災害でもあります。だからこそ、ハザードマップで自物件のリスクを正確に把握し、火災保険の水災補償を適切に整え、台風シーズン前の点検と入居者への周知を丁寧に行うこと——この基本動作の積み重ねが、被害の大小を確実に左右します。

そして何より、これらの対策は管理会社と連携することで、より確実に実行できます。共用部の点検スケジュール、入居者への周知方法、緊急時の業者手配など、平常時に役割分担を決めておきましょう。「うちは大丈夫」と思っているうちにできる対策こそが、いざというときに資産と入居者を守る最強の盾になります。台風シーズンを迎える前に、ぜひ一度、自物件の水害対策を総点検してみてください。

出典・参考情報

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